【旋 律】後編 第十五章

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  「そしてね、薫がお父さんに抱き着いたとき少しヤキモチやいちゃった」 そう言ってイタズラな笑みを浮かべ亜美に、楓はクスリと笑った。 「ごめんごめん、人様の彼氏を抱き締めちゃったね」 「ううん、そうじゃなくて。 薫にお父さんを盗られたような錯覚に襲われて、なんだか変な気分だったの」 「僕も君の父親でありながら君の彼氏の兄貴でもあるから、すごく奇妙な気分だったよ」 そう言って肩をすぼめた楓に、 「そうだよね、複雑だよね」 亜美はプッと笑った。 「だけど薫も亜美も僕にとってかけがえのない存在だから、そんな2人が惹かれ合っているなんて、そんな素敵な偶然に感謝しているよ」 そう言って笑みを見せた楓に、亜美は照れたように笑った。  
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