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「……薫と離れ離れになってしまうね」
「……うん」
亜美はコクリと頷いて、遠い目を見せた。
「もし、君が薫の近くにいたいというなら、僕は手を貸すよ」
囁くようにそう言った楓に、亜美は「えっ?」と顔を上げた。
「それは留学させてくれるってこと?」
その問いに楓はゆっくり頷いた。
亜美は目を伏せて、「ううん」と首を横に振った。
「……薫の側にいたいけど、それは薫の決意を駄目にしてしまうことにつながると思うし、私自身留学してまでその国で学びたいことがあるわけじゃないから、ここでがんばろうと思う」
「そうか……そうだよね、僕も娘のこととなると、甘いよな。冷静な判断ができなくなってた」
そう言ってバツ悪そうに苦笑した楓に、亜美は「お父さんったら」とクスクス笑った。
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