【旋 律】後編 第十五章

15/26
前へ
/26ページ
次へ
  「それより布施、お前の方は?結婚に向けて話は進んでるのか?」 布施は、ああ、と頷き、 「双方の両親への挨拶も済ませたし後は結納して式は来年だな。 でも、もう一緒に暮らしてるんだ」 サラリとそう言って笑みを見せた。 「それじゃあ新居はそのまま今のお前のマンションになるのか?」 「とりあえずな。 裕子も快適だって言ってるし」 幸せそうな布施の姿に、楓は柔らかく目を細めた。 「すっかり落ち着いた顔になったな」 「お陰様で。 我ながら変わったなと自分でも思ってるよ」 「そうだな。 ……薫もきっと驚くほど変わって帰って来るんだろうな」 そう言って遠い目を見せた楓に、布施も小さく頷いた。 「亜美ちゃんは大丈夫かね?あの子はそういう面では意外に弱い子だろ?」 「ああ、それが心配だよ」 楓は窓の外を眺めながら、そっと息をついた。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1239人が本棚に入れています
本棚に追加