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「それがさっきの碓氷みたいなドSがMを好むわけないって発現につながるわけね?
じゃ、あんたみたいな種族は何がお好みなのよ。」
「ちょーーっぴりSな子。立花タイプ。」
「……あ!なるほどね。わかった。」
私は碓氷の言わんとすることが分かり、満足して食事に再び手をつけ始めた。
「でもそれ、相当タチ悪くない?つまりは本当に嫌がる人間をいじめたいってことでしょ?」
「せいかーい!
まぁでも、いじめた相手にもっともっとってされるとさ、こっちとしては萎えるわけよ。
本気で嫌がる事を普通の対応のなかで少しずつ小出しにすると、嫌がらせのレベルが上がっていくにつれてベースラインを見失うわけ。
もともとMじゃない人間からするとそれに気づく瞬間が苦痛でしょ。
嫌がらせに耐性が付いた自分との葛藤で歪む表情とか、たまんないよね!!」
そこまで興奮した様子で一気にまくしたてた碓氷は、目を輝かせている。
正直私は開いた口がふさがらなかった。
その様子を見て、碓氷が我に返り、まあこんなのはそれぞれの持論があるから、いいんだけどさと話をくくった。
「あんたってそこまで歪んでたのね…。」
「……。」
私たちは、白熱した討論の内容のなさに改めて気付き愕然。
お互いにお酒が入っているにも関わらず一瞬我に返ってしまった。
無言の中、私も食事をしながら次の話題を探す。
(普段感じないけど、碓氷、恋愛に対してはめちゃくちゃ肉食系なんだろうな…)
私がそんな考え事をした時、碓氷はまた真剣な表情で、私が折角逸らした話を蒸し返した。
「元彼かなり年下だったよね。」
碓氷は少しも笑っていなかった。優しい表情、けれども真剣な強いまなざし。
「……。まーね。4歳下。」
そこまで失恋話を聞きたいかと呆れつつ、私は諦めて答え始めた。
「あー…もしかして、浮気されちゃった?」
「…まーね。」
「そっ…か。まあ、落ちこむな。俺らの4歳下っていったら23だろ。遊びたい盛りじゃん。」
「…まーね。私、草食系男子は嫌いだから。」
自分の男の見る目のなさに、苦しい言い訳をする。
「他に女いたんだ?」
頷く私。空になったビールに目をやり、ジェスチャーだけで店員さんに同じものを頼む。
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