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一向に痛みがないことを不思議に思い、目を開けた氷華を含めて、その場にいた者は全員、唖然とした。
あんなにも苦戦していた魔物達が一瞬で
、どんどん消えてしまったのだから。
一通り、周りにいた魔物が消えると固まっていたギルドの者達と魔物の間に一人の者が現れた。
一言でその者を現すとしたら、妖しく美しい。
黒い下駄の鼻緒は白く、着ている和服は黒一色で帯は白。
少し着崩した和服から見える、透き通った美しい色白な肌。
白い紐で結い上げられた長い髪は、美しい漆黒。
顔は白い無表情な仮面で見ることは出来ないが、和服からでも強く主張する胸や声から女であることがわかる。
どこか美しいその者に、見惚れるその場にいたギルドの者達。
魔物は突然、現れた者を警戒し、動かずにいる。
『私は"純白の唄"というギルドに所存しているAランクの者です。黒蝶[コクチョウ]と申します。すぐに終わりますので、待っていてください。』
それだけ言うと魔物達の方を向く、黒蝶と呼ばれた者。
我に返った者が声をかける間もなく、突然、歌い出す。
その歌声に少し動き出していた魔物達の動きが止まる。
いつの間にか、彼女の手には黒い炎に包まれた鉄扇があった。
ふと、姿を消したかと思うとWSランクのホルドと呼ばれる体長4mのイノシシに似た魔物の首を一撃で切り落としていた。
硬いことで知られるホルドを…。
そこからは舞うように次々と魔物を一撃で倒していく。
それは美しく、凄まじかった。
最後の一体が倒されると、歌もやめ、ギルドの者達に近づいて来た。
戦いが終わったと思い、話しかけようとするもまた、歌に遮られた。
先程の子守りの歌とは違い、優しく悲しい歌。
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