恋愛小説

一章

雑誌は兎も角、小説の売上げは頭打ちだ。余程の人気作家でもなければ会社にも作家にも利益にならない。

当然の流れなのだとも思う。電車に乗れば大抵の人々は携帯やスマホを見つめる。

電車で小説など少数派でしかないのだ。小説部門の縮小を掲げた会社の方針に、割りを食った形で彼女は文学畑から追い出された。

その彼女が、馬鹿にしたものじゃないからと言うのだ。

小説を雑誌に反映させたい気持ちはわかる気がしたが、まさか携帯小説に目を付けるとは思わなかった。

私だって編集の端くれで、膨大な人々が素人作品を掲載するサイトの存在は知っている。

もしかしたら…そんな気持ちで上位の作品に目を通した事もあった。

けれども自ずと見る目は厳しくなる。隙間の空いた行間や稚拙な文章に耐えれない。

心の何処かに、活字の方が上だと考えている私も居たのかも知れない。