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その場ですっと立ち上がった。
お婆さんは喜び、すかさず、それは当たり前のように席に座り込んだ。
しゃがむとすぐに、隣のお婆さんと大きな声で会話を始めた。
大きな声が朝の通勤では、かなりの迷惑となるのも分からない様子だった。
頭の中でなにかが弾けた。もう取り返しがつかない――そう、シャボン玉みたいな、それは簡単に弾け、なにもなくなった。
傘を大きく振り上げ、白髪一色の老人の頭に叩き込んだ。一発、二発、三発……何発だろう?
叩いているうちに傘が少しだけ曲がった。
もうわからなかった。理解したのは耳に劈く、周りの悲鳴、それと老人の白髪が赤髪になったこと。
そして周りを見渡すと、誰が怯え、隣の車両に逃げて行った。
それを見た私はほくそ笑んだ。
まるでそれは数分だけ無敵状態になれる、ゲームのアイテムでも手に入れたかのようだった。
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