第3話

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 案の定、レジ横の扉から小さく甘美な声が聞こえてくる。発情した猫の鳴き声だ。 俺はコンビニで人気のポテトを揚げ始めた。油のパチパチと、弾ける音で、聞きたくないメロディは掻き消した。 いかん、いかん。こんなくだらない事で怒っている場合ではない。 今日は大切なイベントの日。仕事が終わったら駅に向かい、店の外で初めて苺に接触をする。 そして苺専用の特別なご主人様が、取って置きの告白をし、プロポーズを成功させる。2人の大事な記念日。きっと感激して、苺は泣いてしまうかも知れない。 今日俺は不公平から脱出し、平等という土俵に上がり、最高に幸せな一日を迎えるのだ。
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