プロポーズ

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この声が容易く耳に届く距離なのに、苺は振り向かない。もっと近くでお前を見たいよ。 走る度に、揺れる脂肪の振動で、ハァハァと息が荒くなり、薔薇の花びらが一枚、一枚散っていく。 「苺! ちょっと待て! ご主人様だよ!」 愛しい後姿に追いつき、無理やり肩を掴んだ。彼女は、しなやかな歩行を止め、驚いた表情で振り向いた。 「きゃあ! なにするのよ! ち、痴漢する気?」 「痴漢だなんて、ほら、あの、パフュームに行けなくなってしまったから…… 外で話したくて。君の大事なご主人様だよ。逢えなくなると思うと、寂しかっただろう?」 「はぁ? 誰が寂しいの? ふざけないで!」
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