第10話

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「ごめんなさい秋雄さん。海老の天婦羅が大好物なんですよね、はい、器のつゆに付けて、はぁ~い、あ~ん」 秋雄の箸を掴み、手を添え、憎い男の口元に海老を運ぶ。 「美味い! さっくさくじゃん! いつものお袋の味と全然違う!」 「まっ! 秋雄さんたら」 ――俺の前でいちゃつくな……お前は昔から、本当に忌々しい人間だな。 「絵恋さん、一杯ワイン飲んでからキッチンに戻りなよ。はい、どうぞ」 「信介さん。ありがとうございます。ではお母様の所へ戻る前に一口……」 ワインの赤と、ぽってりとした唇の色が重なり合い、変に艶かしい色彩に見とれていた。 「絵恋さん、あのう、どこの喫茶店で働いてるの?」
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