第10話

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「ただいまーごめん! 遅くなった!」 玄関で大声を出しながら、靴を脱ぐ。急いで走ったものだから息が切れ切れだ。ふと下を見ると、女物の白いハイヒールが置かれていた。 ――やべっ! 来てるじゃん! 大声出さなきゃ良かった! 玄関脇の、壁面に備え付けてある金色の淵の丸い鏡で、慌てて髪型を整えた。 ――バッチリいけてるよな?  ニヤーっと笑顔を作り、可愛い信介に準備万端だ。 「おーい、早く来いよ。遅いぞ! 信介」 「分かったよ、今行くから兄貴」 ――うるせーな。俺にも心の準備ってもんがあるんだよ!  なんだか緊張する……いや、絶対にドブスなハズだ! プレッシャーを感じる必要は無い。逆にこんな気持ちは、勿体無いくらいだ。
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