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「い、いますよね! 出てきなさぁーい! いでよ~孔明! なんちって」
店主が好きそうな掛け声をすると、奥からスッと孔明が姿を現した。
再度、話しかけようとすると、無言でいつものピンク色の扇をたたんだまま、店の前の金色の呼び鈴を押した。
ジリン、ジリン、ジジリリーンと耳を劈く。
「キョチョ、最後と言いながら、また来たでしょ。予想は当たったね。
それとこれ、呼び鈴。近所迷惑だから、今度からこれを押しなさい」
「わ、分かりました。ちょっと、そんな事より、俺のファンタスティックアンブレラがぁ!」
焦りながら訴えた。額に汗が、より滲む。
「ファンタグレープ? ジュースは無いよキョチョ? まぁいい。奥でゆっくり話を聞くから」
扇子をバサリと勢い良く片手で開き、目を細め仰ぎだした。そして俺に背後を向ける。その背中はまるで、ついてきなさいと語っていた。
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