【Tip-off】

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「……なんすか?」 引きつった顔を無理矢理自己修正し笑って誤魔化しながら態勢を立て直す。 ある意味ディフェンス状態ですね?分かります。つかバスケ部員を舐めんなよ?!藍沢風紀委員長様。 「ネクタイ」 「はい?」 ……コイツ、なんか苦手だ。 居丈高に「ネクタイ」と吐き捨てると、じいっと高身長の委員長に見下ろされて俺も見つめる。威圧感が半端ない。高校生とは思えない雰囲気が誰かとよく似ている。ああ、流(親)と同種かと心の中で頷いた。銀縁眼鏡がキャラ被ってるし、さすが魔王属性(個人の意見です)と面倒な気分に陥る。 「…………」 「――――」 脳内会議の結果デジャヴに辿り着いた時には、無言で委員長様自らご丁寧にも俺のネクタイを締め直して下さってました。……不器用で申し訳ない。 バッシュの紐も、よく先輩に結んでもらってんだよな。家庭科は苦手だ。特に縫い物系。料理は得意なんだが……全く料理しない流のおかげ(せい)で。 「……央君!」 「奈央君!」 「おわっ?!」 春野に強く腕を引かれて意識が遠足にお出かけしていたことに気付く。隣の春野を見下ろすとほっぺたを赤く染めて涙目になっていた。 風紀にビビったのか?と苦笑する。潤んだ目で俺を見上げる春野は可愛い。まるで小型犬みたいだ。俺は猫好きだが犬ももれなく好きだ。 再び意識を遊ばせる俺に「奈央君……」あきれた溜め息をプレゼントされた。
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