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――神様なんて、居ない。
ガックリと肩を落として大袈裟ではなく心の底から溜め息を吐く。
「どうしたの?奈央君」
そんな俺を見かねた春野が心配そうに話しかけてくれた。
――時は、昼休み。
「弁当忘れた……」
朝のゴタゴタのせいだ。間違いなく全力でアイツのせいだ。と、心の中で毒を撒き散らす。
「はぁ……」
……腹減った。
デイパックを何度も確認してみても、無いものは無い。痛恨のミスを犯した俺は自省する。弁当を置き去りにした現実に気付いたら、留美さんきっとしょんぼりするんだろうな、なんて考える。留美さんを想像すると胸が痛い。腹が減りすぎて胃も痛い。
「「「――きゃあぁぁああっ!!」」」
……耳が痛い。
食堂に行ったかと思われたクラスの連中や外で弁当を食べている在校生がいっせいに叫んでいた。
しかも「きゃあ」とかありえねえ。ここ男子校だぞと思いつつ昼飯をどう確保するか思案中の俺の耳に聞き覚えのあるクラクションが届いた。明らかに押しっぱだと思われるクラクション。それが鳴り止むとしばらくして絶叫が聴こえた。
「チッ、まじかよ」
神様、これは 試 練 なのですか?
(嫌がらせ)
こんな派手で無謀な事をする人間は我が家の“魔王”を於いて他に居る気がしない。
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