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教室の外、無駄に広いベランダで昼食をとる予定だった俺たち。レモンティー片手にうんざりしながら見下ろす。
予 感 的 中。
遠目にもわかる、その人物の不遜な所作。正門前には斜めに突っ込んだ黒塗りのセダンが立ち往生していた。
「……まじかよ」
「奈央君っ?!」
紙パックを押し付けた俺は春野の声を背中で受け流し、全力疾走した。
「……ッなっにしに来たっ?!」
まいった、息が上がる。身体なまってんのかな?今夜あたり水野を誘って走り込み行くか……。
なんて事を考えつつ(この間※約二秒)正門の前で腕を組む母親を睨む。
大きな正門が自動で開いている。来客として認識されたようだった。
「開口一番がそれか、奈央。他に何か言う事はないのか」
薄いサングラス越しに鋭い視線が刺さる。
手には、当の人には不似合いな白いペイズリー柄。布に包まれた弁当箱とおぼしき物がある。
イエス!留美さんの弁当!
無言で奪い取ろうとした寸前で、ヒラリとかわされた。
……何なんだよホントに。
「で?何か言う事は?……奈央」
完全に流(母親)におちょくられてるとしか思えない。体勢を崩した俺を楽しげに眺める相手を見下ろした。
……漢、黒川奈央。
いざ決心するも実に締まらない。
『奈央』なんて女みてえな漢字なぜ付けた?小一時間問い質したい。顔も知らない父さんのばかやろう。
「どうした奈央」
「うるせえ」
ついつい思考をダンジョン(現実逃避)へと旅立たせかけたが、酷くなる一方の悲鳴とむかつく笑顔に引き戻された(ただいま)。屈辱感を味わってでも留美さん(お手製弁当)を必ず入手してやる、と潔い精神退却を試みる。
「ほら、どうした?」
実の親が何やってんだ?!と溜め息を零しつつ周りを伺う。人影はないが目立っているのは間違いない。一刻も早く、この馬鹿親をこの場から駆逐したい。まっすぐ見つめながら、口を開いた。
「ありがと「失礼、どうかされましたか?」……!!」
……ジーザス!(本日二度目)
学園の魔王、またかよ……襲来。
(お願いやめて)
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