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「その……、お二人は黒川、様、とはお知り合いなんですか?」
冷たい笑顔を保った風紀委員長がやっと接客を開始した。『黒川様』というフレーズに違和感を覚えるが、いまは俺が『お客様』だからか、プロに徹しているのだろう。完璧主義らしい委員長はそつなく微笑むが俺と目を合わせてくれない。
「くぅちゃん、はい。コーラだよ」
藍沢委員長を無視した華がくすっと笑う。グラスに差してあるストローの先端部分の切れ端を、薄く開いた唇で挟んで抜いた。慣れた手つきでアイストングを操り、氷をひとつグラスに落とした。
「……さんきゅ」
俺の事はいいから風紀魔王を構ってやれよと思いながらも大人しく受け取る。
「それいらないから華「んー?どれ?」
片手でグラスを持つ俺の手を両手で包み込む華。汗をかいたグラスと華の大きな掌から伝わる熱の温度差にクラクラする。
こんな衆人環視の中なのに――神経がおかしくなる感覚に息を詰めた。
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