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「ね、くぅちゃんおいしい?」
「いやまだ飲んでないからな。非常に飲みにくいわ!こっち見んな。やめてあげてください「はやく俺を飲んで」おいやめろ」
極上の笑みとこの声はまじで心臓に悪い。
すっかり華のペースに巻き込まれたテーブル。戸惑いながら相槌を打つ先輩達をぼんやり眺めた。
「中学が一緒だったんですよ、黒川と」
「ちょっ、賢人っ」
肩に回した腕の力を込めながら『一緒』の部分を強調し綺麗に笑う。何やら不穏な空気感が重くのしかかる。
「ああ。そうなんですね」
藍沢さんも笑顔を崩さず、固唾を飲んで見守る2SSの秀逸なホスト先輩達のドリンクを作り、神経質そうな指先でマドラーを回し掻き混ぜた。ブランデーに見立てたボトルの中身は、訊けば烏龍茶だという。細部に渡った演出が凄い。
「申し遅れました――」
変に緊張感のある社交辞令的な乾杯を済ませたあと、おもむろに名刺を取り出した。
「はじめまして。藍沢と申します」
取 引 先 か。
風紀委員長の堅苦しい自己紹介を聞いたホスト達が甘ったるく苦笑いした。
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