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おばあさんは桃によしかかり腕を組むと、おじいさんをその場に正座させました。
「この桃から種を取って育てるんだよ。それも大量に。森に住んでいる山田さんにも手伝ってもらおう」
「山田さんて初めて聞いたぞワシ」
「銀行からの融資で大型機械一式は揃えられる。ここ浦島家が代々守り抜いている土地は隣の家が見えないほどに広大。川から水を引けるし、町からもそう遠くはない。マスコミを呼んで騒がせれば、桃の値段も跳ね上がるに違いない」
「なるほど、それは素晴らしいのー」
と分かったふりをし、正座という名の呪縛から解き放たれたおじいさん。種を取り出そうと包丁を持ってきました。
包丁を桃に突き刺し、桃がパカッと割れると、中では小さな男の子が泣いていました。おじいさんは慌てて包丁を置き、赤ん坊を抱きかかえました。
おばあさんは目を見開いて桃の中を見つめました。
「種が……ない?」
おじいさんは腕の中の赤ん坊をおばあさんの目の前まで持ってきました。
「子宝に恵まれなかったワシらに神様がプレゼントしてくれたんじゃな……」
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