土の章 祭の夜

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「ねえ、あの劇はなんなの?」 「ん、あれはこの村に昔から伝わるお話を村の人たちがしてるんだよ。ほら、妖が封じられる話きいたことあるんじゃないかな?」 妖狐が村に頻繁におりて、人を化かすようになった。 村は今後、化かすだけじゃ済まなくなるかもしれないと妖狐を封じる。 妖狐を封じた森はその呪いで燃え上がることがあるのだ。 村には届かず、森もなんとか再生するような規模らしいが。 けれど……妖狐は本当は人と仲良くしたかったのではないだろうか。 森が燃えるのは燃えやすい木が多いからだろうから、妖狐は罪を被せられただけだし。 わたしは持て余した時間の中でたまにそんなことを考えてみる。 人のふりして、仲良くしようとしても、妖だとばれた瞬間化かしたことにされてしまう。 能力者とにている気がして、この狐は嫌いになれなかった。 「珠莉?どうかしました?」 「あ、うん……なんでもないよ母さん」 わたしの顔を覗き込む母さんに小さく首を振ってこたえる。 別のとこに行こう。 あのお話についてはよくいえば由緒のありそうな、言ってしまえば古い、屋敷についてからでいい。 どうせ帰れば暇だけはあるんだし。
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