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その日のわたしはいつものごとく暇を持て余していた。
式神のヨルもふわふわと部屋を漂いながら、退屈そうにあくびをしていて、話し相手にすらなってくれなさそうだった。
「珠莉さん、珠莉さん、起きてる?」
「ん、起きてる……」
そう答えながら扉をあけると、いつも通りの微笑みをうかべて兄さんが扉の前に立っていた。
「どうしたの?」
また何処か遠くにいく仕事でも入ったのだろうか……。
父さんもいまは首都のほうにいってるっていうのに。
「ああ、心配はいらないよ。今日はちょっといつもと違う話なんだ」
表情から気持ちを察したのか、兄さんはそう前置きしてから
「母さんと三人で祭りにいかないかな?」
と問いかけた。
願ってもない話だった。
普段家を出してもらえるのなんてどうしても応対しなきゃならないような人がきたときくらいなのだから。
もちろん、能力者であることを隠すためというのは理解してるのだけど。
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