始まり

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紙を手に取り、周りに誰もいないか確認する。…誰も居ない事など分かりきっているのだが。 こんな無駄な動きを何故しているのか、自分でも理解出来なくなってきた。 いつもと違う自分の行動や言動に困惑しながらも内容を確認する。 『また来るね』 そう、乱雑な文字で書かれていた。 …また来る? 冗談じゃない。 あんなうるさい奴が――――人間がまた来るだと…!? カッと頭に血が上る。 平衡感覚が変だ。 嗚呼、頭がおかしくなりそうだ。 人間如きが、私の所へ? 一体、何が目的で? …………そんな事、私が一番、分かっているのではないか? その瞬間、脳内に鮮明に映像が映し出される。 幼い頃の“僕”は、小さな白い部屋で小さく縮こまっていた。 小さな小さな錆びた鉄格子から、外の声が聞こえた。 ―――――“知ってる?あの部屋には悪魔がいるのよ” 噂話でもするかのような口調で。 僕は悪魔なの? ―――――“あぁ、本当、恐ろしいわよねぇ” 忌み嫌うような声で。 僕が恐いの? ―――――“近寄るなっていっただろう、化け物がいるんだぞ!” 排気口を覗こうとした、男の子の父親らしき人が。 僕、なにもしてないよ? ―――――“悪魔め” 真っ赤に血塗られた僕を見て。 僕じゃないよ、僕がやったんじゃない ―――――“嫌!この子を殺さないで!” 恐ろしいモノでも見るかのような。 違う…僕はただ……… ――――“ッ、『それ』を…ッ化け物を、生け贄にするから…ッ!” “悪魔”に対して、僕の父は命乞いをして。 僕が、生け贄? ねぇ、父さん、なんで 忌々しい過去が、鮮明に脳裏に次々と蘇る。 途端に呼吸が出来なくなり、目がチカチカする。 頭が、痛い。 立つ事が難しくなり、その場にしゃがみ込む。
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