3人が本棚に入れています
本棚に追加
私はふぅ、と溜息を吐き、体をリラックスさせる。
一度力が抜けてしまっては、…なんだかもう、拳を握る事が面倒になった。
殴ったところで、こいつは自身の身体能力で、私の殴りなど避けるだろうしな。
この城が完成した時からずっと閉ざされたままの門に背を向けて、そいつに話す。
…私は一人でいいのだ。
「外は嫌いだ。人間は嫌いだ。
私がただ人と違うから、人ではないからと化け物扱いするしな。
お前も人間。偽りの同情を向け、相手に浸け入れ、相手の心を惑わし、何もかもを奪って殺す。」
するとそいつは私に優しく微笑んだ。
「…僕が守る。」
「……は?………何を、」
一瞬何を言われているのか理解出来なかった。
私の言葉が通じているのか?
呆然としている私をじっと見つめてくるそいつ。
「守るよ。
君を化け物呼ばわりする奴らから。」
「…っな…。」
上手く言葉が出てこない。
「だから。
外に出よう。一歩、外に踏みだそう。
僕が君を守るから。」
だから大丈夫だよ、とそいつは私に手を差し伸べた。
…なんだ、こいつは。
二日間で何回言ったか分からない程同じ言葉が出てくる。
その時、その言葉を聞いた時、私から出てきた感情は…何もない。
冷たい目でそいつの顔を見ながら、差し伸べられた手を振り払う。
「ふざけるな」
…その時に出た声は、自分でも驚くほど低く、とても自分のものとは思えぬ声だった。
「…………。」
そいつは何も言わず、真っ直ぐに透き通った目で、私を見る。
その、落ち着かせるような目が私の神経を逆撫でにした。
「…人間とは醜い生き物だ。
お前もそうだ。
どうせ、どうせそんな顔も偽りなのだろう?」
冷ややかな声でそいつにに言うが、そいつはまだ、黙っている。
とても悲しそうな目で。
最初のコメントを投稿しよう!