始まり

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私はふぅ、と溜息を吐き、体をリラックスさせる。 一度力が抜けてしまっては、…なんだかもう、拳を握る事が面倒になった。 殴ったところで、こいつは自身の身体能力で、私の殴りなど避けるだろうしな。 この城が完成した時からずっと閉ざされたままの門に背を向けて、そいつに話す。 …私は一人でいいのだ。 「外は嫌いだ。人間は嫌いだ。 私がただ人と違うから、人ではないからと化け物扱いするしな。 お前も人間。偽りの同情を向け、相手に浸け入れ、相手の心を惑わし、何もかもを奪って殺す。」 するとそいつは私に優しく微笑んだ。 「…僕が守る。」 「……は?………何を、」 一瞬何を言われているのか理解出来なかった。 私の言葉が通じているのか? 呆然としている私をじっと見つめてくるそいつ。 「守るよ。 君を化け物呼ばわりする奴らから。」 「…っな…。」 上手く言葉が出てこない。 「だから。 外に出よう。一歩、外に踏みだそう。 僕が君を守るから。」 だから大丈夫だよ、とそいつは私に手を差し伸べた。 …なんだ、こいつは。 二日間で何回言ったか分からない程同じ言葉が出てくる。 その時、その言葉を聞いた時、私から出てきた感情は…何もない。 冷たい目でそいつの顔を見ながら、差し伸べられた手を振り払う。 「ふざけるな」 …その時に出た声は、自分でも驚くほど低く、とても自分のものとは思えぬ声だった。 「…………。」 そいつは何も言わず、真っ直ぐに透き通った目で、私を見る。 その、落ち着かせるような目が私の神経を逆撫でにした。 「…人間とは醜い生き物だ。 お前もそうだ。 どうせ、どうせそんな顔も偽りなのだろう?」 冷ややかな声でそいつにに言うが、そいつはまだ、黙っている。 とても悲しそうな目で。
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