始まり

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「お―――――い 聞こえないのかい―――?」 そんな私の心情を外にいる“誰か”が知る由もない。容赦なく馬鹿でかい声が寝起きの体に響く。 何度も何度も何度も何度も…………煩い… 誰だこんな時間に… 本当に長い間、人と関わらなかったからだろう。こういう時は何をどうすればいいのだろうか、分からない。 自分が不機嫌なのは分かるが、顔に変化があるかどうか分からない。 とりあえず何者か気になるので、ゆっくり体を起こして、部屋の窓までのったりと移動する。 ここで窓の開け方だが、私自身、人間とあまり関わりたくないのだ。 関わり方もよく分からない。 だから窓を少しだけ開け、チラッと人間の姿を確認する。 私の視力は抜群に良い。 それこそ滅茶苦茶遠くの場所も見える。 城の周りは人が近寄らないように結界を張っているので、叫んでいる人間も結界の外の筈だ。 …………それにしては随分と大きい声だ。 どんだけ声を張っているのだろうか。 そう考え、目を凝らして辺りを確認する。 「おーい、おーーいっ!」 ………ふむ。声と見た目からして、どうやらまだ若い青年のようだ。 それにしても誰を呼んでいるのだ? 「お―――い!」 見ているのは………城の中。 ………ん…? 城を…見ている? 無機質な、この…建物を見ているのか? そいつと目が合った気がした。 ………私を見ている、のか………? 私は咄嗟に、窓から離れ、身を隠した。
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