始まり

4/16
前へ
/27ページ
次へ
“私を呼んでいるのではないか” そんな考えが頭によぎった。 …いや、そんな筈はない。 私は獣だ。 人ではない。…なら興味本位で…というのもあるかもしれない。 しかし私はそんな奴を結界で弾き飛ばし、二度と近寄らせない様にした。村もまた、そんな恐ろしい場所に人が近寄らない様に策などをつくった。 ここで、この城と村を“隔離”しているこの結界についてもう一度考える。 まず勿論だが、結界は城の外側に城を囲むようにしてある。 この結界は過去の私が、私に対して敵意を持った奴、…まぁ殺そうとしたりなどだが、それと欲を持った奴、…私を利用しようとする奴らが近づかない様にと創ったものだ。 お陰で誰も城に近寄らなかった。いや、近づけなかった。 それは当然なのだろう。 無欲な人間などいないのだから。 …だから簡略化すれば人払いの結界という訳だ。 しかし私は誰も来ないようにとはしていない。 同じ事を言うようだが、ほんの少しでも私に対して悪意などを持っている人間が、決して近付かないように施したのだ。 つまり、悪意や欲望を持っていない奴は来れるという訳だ。 そしてそいつは結界の中にいる。 結界がどのような構造なのかというのは割愛するが、森、結界、門と城の周りを囲む壁、城、というようになっている。 ………という事は、あの男は悪意も欲も持ってないという事か。 先ほどから変わらず叫んでいる青年をまた見る。 しかも手も振っているそいつはさわやかな好青年といった印象で、確かに悪意を持ってるとは思えない。 が、私は人を見た目で判断しない。 というか人を信じない。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加