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“私を呼んでいるのではないか”
そんな考えが頭によぎった。
…いや、そんな筈はない。
私は獣だ。
人ではない。…なら興味本位で…というのもあるかもしれない。
しかし私はそんな奴を結界で弾き飛ばし、二度と近寄らせない様にした。村もまた、そんな恐ろしい場所に人が近寄らない様に策などをつくった。
ここで、この城と村を“隔離”しているこの結界についてもう一度考える。
まず勿論だが、結界は城の外側に城を囲むようにしてある。
この結界は過去の私が、私に対して敵意を持った奴、…まぁ殺そうとしたりなどだが、それと欲を持った奴、…私を利用しようとする奴らが近づかない様にと創ったものだ。
お陰で誰も城に近寄らなかった。いや、近づけなかった。
それは当然なのだろう。
無欲な人間などいないのだから。
…だから簡略化すれば人払いの結界という訳だ。
しかし私は誰も来ないようにとはしていない。
同じ事を言うようだが、ほんの少しでも私に対して悪意などを持っている人間が、決して近付かないように施したのだ。
つまり、悪意や欲望を持っていない奴は来れるという訳だ。
そしてそいつは結界の中にいる。
結界がどのような構造なのかというのは割愛するが、森、結界、門と城の周りを囲む壁、城、というようになっている。
………という事は、あの男は悪意も欲も持ってないという事か。
先ほどから変わらず叫んでいる青年をまた見る。
しかも手も振っているそいつはさわやかな好青年といった印象で、確かに悪意を持ってるとは思えない。
が、私は人を見た目で判断しない。
というか人を信じない。
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