始まり

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その情けない声に身体が震える。 「何がへぇ?だ。 朝から城で大きな声を出し、庭の木に引っかかり、お前は何がしたいんだ!」 「ご、ごめん」 素直に謝って顔色を窺うようにチラチラとこちらを見る。 「…………」 改めて見ると、顔立ちの良い青年だな。 肩まである長く赤みがかかった艶のある黒髪。 澄んだ深い蒼の瞳。 整った顔立ち。 ……おそらく色んな奴から恋文など貰っているだろう。 「な、何か顔についてるかな。」 じっと見ていたせいか、照れたように頭を掻いている。 「…何もない。 お前は何故ここに来た。どうやってこの城に入った。」 「へ? ああ、いやあ、僕が昔読んだことのある絵本に『獣のいる城』っていうのがあったんだ。 この村に、お城があるなーって思った時、なんだか、ここにいるのかな~って直感で思って…親に起こられないように、朝早くから、こっそり…。 それと、僕、運動だけは出来るから… この城の門が開いてなかったんだけど、どうしても城の中を見たくて、飛び越えたんだ。」 あははは、と笑う青年。 …とても笑えないのだが。
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