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「あったかいな」
「うん」
「疲れがとれる」
「ほんとに?」
「璃子は?」
「えっ!?」
「楽しい?」
和也さんは、わざとあたしの首元に顔を埋め、窺うように聞いた。
「楽しいよ」
「ごめんな。もっとおしゃれな所へって思ってたんだけど」
「そお?とっても素敵なところだよ。それに……」
「それに?」
「ここは、ゲンさんと美千代さんだけじゃなく、和也さんの家族みんなの思い出の場所なんじゃない?」
「どして?」
「さっきの女将さんの挨拶からして、みんなで家族旅行に来た場所なのかなって思って」
一瞬、和也さんが微笑んだのが分かった。
……やっぱり。
「家族との、大切な思い出の場所に、早速あたしを連れてきてくれたんだ」
そう言いながら振り向くと、照れた和也さんの瞳とぶつかった。
「……よくわかったね」
優しい笑顔が重なる。
今後、家族の話題でこの旅館が出たときに、あたしがついていけるようにと、ここを選んでくれたことがわかった。
和也さんの優しさが胸に沁みると同時に、結婚したんだなぁって実感がこみ上げてきた。
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