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「璃子、そんな端っこじゃなくて、こっちにおいで」
甘めの声で、あたしの背中に声をかけた。
「夫婦なんだから」
恥ずかしさで戸惑うあたしに、さらに追い打ちをかける。
「……はい」
ドキドキしながら、背中を向けたままゆっくりとアヒル歩きで向かう。
「ほらっ」
同時にタオルの上から、おなかに回された腕が、グッと抱き寄せる。
浮力で浮いた体は、いとも簡単にすぅーっと引き寄せられ、あっという間に和也さんの腕の中に納まった。
「体が、冷えてる。よく浸かって」
和也さんの胸が、背中にピタリとくっつく。
「だ、大丈夫だから」
今更ながら抵抗しようと試みる。
「ほら、じっとして」
耳元でささやく声が、一瞬で、あたしの動きを封じ込めた。
背中から、抱きしめられたまま、小さな子供を無理やりお湯に浸からせてる状態。
なんだか可笑しくて、クスッと笑った。
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