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「ありがとう……でも、あたしは和也さんとなら、どこだって……」
言いながら、恥ずかしくなって、また顔を前に向ける。
「どこだって?」
和也さんが、後ろから覗き込む。
どうやら、今日の和也さんは、最後まで言わせたいらしい。
「どこだって、うれしいし、幸せだよ」
フッと耳に息がかかり、微笑みを浮かべたであろう和也さんの表情が目に浮かぶ。
同時に、首元に『ちゅっ』とキスを落とされ、身体中に電流が走った。
「大胆だな」
「えっ!?」
振り向きざまに、今度は、唇を奪われた。
和也さんの方が、大胆じゃん!
ゆっくり唇を離しながら、見つめ合う。
もう一度、軽く、『ちゅっ』と、音をさせてキスをした。
「のぼせてるな」
「えっ!?」
「お湯に」
一瞬『璃子に』って言ってもらえるのかと、期待させておいて、ニッといたづらっぽい笑顔を輝かせる。
まったくもぉ……
完全なる和也さんペースに、苦笑い。
「大丈夫?」
「あぁ」
「お湯が滑らかで、柔らかい」
「あぁ。本当に」
お湯を掬ってみせれば、和也さんが微笑む。
「気持ちいいね」
「そうだな」
自然と向かい合い、温泉にゆったりと身体を浸からせる。
どこまでも雄大な景色と、芯まで温める温泉が、心と身体を解きほぐし、ふたりの夫婦1日目を穏やかに祝福した。
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