惨劇の始まり

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正面玄関から向かって右側に、食堂。左側が遊技室である。 アトリエは遊技室の奥。 階段の影に隠れた場所にそのドアはあった。 「ここの造りって、左右対称ではないんだね。」 管理人室は狭苦しい印象があったが、ちょうど反対側に位置するアトリエと呼ばれるこの部屋は広い。 鳥澤はキョロキョロと部屋を見渡した。 何枚ものキャンバスが、壁に立てかけられていた。 床に折り重ねられているものもある。 少し、雑な感じがする。 画家が座っていたであろう、木製の椅子と、私には用途も分からない、油絵の道具が床に転がったまま放置されていた。 しかし、アトリエの中で最も目を引いたのは、部屋の真ん中に置かれた、巨大なキャンバスだった。 ただのキャンバスではない。 「電飾…?」 私はそっと手を触れてみた。表面はつるつるして、冷たい。中に、たくさんの小さな電球が見える。 後ろを見ると、何やら、電気コードが伸びている。 「ダメだよ、三神。管理人さんに触るなって言われただろ?数日前に業者が搬入したのって、これじゃないの?」 鳥澤に注意され、私は手を離した。 「貴女、例の手紙の内容覚えてる?ゲームの勝利条件。」 条件は2つ。 当然だが、ゲーム終了時点で、生存していること。 そして…何だっけ。 アトリエの絵を完成させること。 アトリエの、絵か。 「どう見ても、これの事だよね。搬入業者ってのは、奴等の事だったのか。やはり、管理人もグルなのか?」 いや、そうとは言い切れない。むしろ、怪しいのはこの館のオーナーの方だろう。 数年前に変わったと言っていた。 奴等なら、こんな山奥の洋館1つ、簡単に手に入れるだろう。
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