女神の口

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少年が、勢いよく食堂を飛び出すと、その場にいた他の者たちも、各々動き始めた。 最後に残ったのは、私と鳥澤。そして、芦原だった。 「カードの事、もっと詳しく知りたい。」 芦原は、自分からそう言ってくれた。 私と鳥澤は、自分たちが以前巻き込まれた事件について、彼女に語った。 「悪いけど、信じられないわ。でも、確かに人が一人死んでるし…。」 「そうね。おそらく、カードを発動させた者がいるはずよ。…そういえば、殺された風間さんのカードはどうしたのかしら?」 私達は、風間の部屋へ向かうことにした。 後で、警察が入るかもしれないので、あまり荒らさないように部屋を捜索する。 カードは、見つからなかった。 「…ねえ。」 鳥澤がぼそりと呟く。 「服のポケットじゃないかなあ?」 ああ…、服を着たまま溺れていたんだっけ。 「いいよ、あたしが見てくる。」 鳥澤は芦原に気がねして言った。 「じゃあ、私と芦原さんは、女神の口を探すわね。」 場所は見当がついていた。 浴室と、そこは目と鼻の先である。 「ここ…?」 階段の裏側。 私がドアノブを回すと、鍵はかかっておらず、簡単に開いた。 「ち、地下室?」 芦原は興奮を隠せない。オカルト・マニアの血が騒ぐのだろうか? 「管理人さんから、懐中電灯を借りてくる!先に、一人で行かないでよ!」 「はいはい。待ってるわ。」 私は苦笑いした。 子供か。 彼女を待っていると、鳥澤がいるはずの浴室から、なぜか石山が出てくる。 「浴室は使えないわ。…部屋のシャワーを使うように、管理人に言われたでしょ?」 声をかけると、彼女は逃げるようにして、走り去る。…なんだ?一体。 「三神さん、管理人さんも一緒に来てくれた!」 芦原が戻ってきたので、私達は地下室を降りることにした。 管理人が先頭になり、先を照らしてくれる。 「不思議ですね。…このドアの鍵は、私がここに勤め始めた時には、すでになかったのに。前のオーナーにも、ここは触らなくていい、と言われていたんです。」 普通の人間なら、好奇心で開けてしまうかもしれない不審なドア。 この男の性格から、ダメと言われれば、決して触ることはないと見抜いていたのだろう。…適任という奴だ。
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