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「これに絵を描くって、どうやるのかしら?…通常のやり方とは違うのよね。」
私はキャンバスの周りを調べた。
しかし、特に何かをいじるスイッチもなければ、道具も見当たらない。
「ねぇ、三神。ここ見て。」
鳥澤の指差す先には、よく、テレビなどに見かける、受光部分が付いていた。
「つまり、遠隔操作する道具が必要ってわけ?」
それとも、
「すでに誰かに持ち去られてしまった後、とかね。」
リモコンがないと、テレビやエアコンが操作出来ないのと一緒だ。
本体には、予備のスイッチなど、ついていないのだから。
…だとすれば。
「すでに、このゲームを認識し、しかも積極的に動いてる人間がいると思った方がいいかも。」
私は深呼吸した。
「それと貴女、気がついて?…食堂に現れなかった人間が二人いるわね。いかにも怪しいわ。」
「うん。でも、三神は全員を見てるはずだろ?バスに乗り込んだとき。」
鳥澤は私の顔をのぞきこむ。
「馬鹿ね。…こんな事件に巻き込まれるとは思わないから、いちいち顔を見ていないわよ。」
カトリーヌくらい、目立つ格好をしていれば別だが。
「どうして、食堂に降りてこなかったのかな?具合でも悪いのか?」
鳥澤はアトリエの中をうろうろ歩きながら、呟く。
「…とにかく、怪しいには違いないわね。さて、ここにいても仕方ない。…次は、女神の口というのを探すわよ。」
女神の口か…。
口…。
何の事だろう?
何かの隠喩か?
いや、キャンバスを見る限り、おそらく分かりやすいものだろう。
奴等の目的は、あくまで殺しあいをさせることだ。
それはいたって、シンプル。シンプルゆえに、人を惑わせる。
「キャアアアアッ!!」
突然、廊下からけたたましい悲鳴が聞こえてきた。
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