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生後間もなく、躯に毒を宿して居た私は、
「此の毒で、殺せない者は居ない」
と云う自負を胸に、今日迄生きて来た。地位、権力、富、名声、美貌…。
如何なる栄誉も、毒の前に次々とひれ伏し、屍の山を築いた。
やがて私の毒は、国全体に広まり、風と成り、海を隔てた大陸に知れ渡り、
私自身が命を狙われる身と成った。
何千何万と、軍勢が押し寄せて来ようと、誰も、私を殺す事が出来無い。
其れは、
毒の前で山の様に詰まれた屍の一つ一つが、証明して居る、
自分の力で築き上げた、屍の城の頂きで、高みの見物をしながら待ち構えてやろうと、
山の頂を目指して、登るのだが、
屍の中に、見慣れた顔を見た。
両親、兄弟、友人、そして嘗ての、恋人だった女、
私の毒で殺めてしまった、私の財産達。
最早、私には失う物は無く、そして、得る物も無くなり、孤独に生を全うする他無く、
唯一、築いた屍の城を護る事のみが、私の存在意義で在る。
私の毒で、
私自身は、
殺せない。
そう思い、屍の血で出来た赤絨毯の路を眺めて居ると、私の頭上に何かが止まった。
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