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驚きのあまり床に落としてしまったランプは、中から白い煙が上がっていた。
濃度の高い煙ではあったが、不思議なことに煙たくなかった。煙なのに。
煙はしばらく俺の視界を遮ったが、やがて辺りに霧散してーー消えた。
空気に溶け込んだ、という表現をした方が想像しやすいだろうか。
窓も開けていなければ換気扇なども回していないにも関わらず煙はそう経たないうちに消えたのだった。
「……っ!」
そして視界がクリアになったところで、俺は絶句する。自分の視界を疑った。幻覚か夢なんじゃないのかとも思った。
「だ、誰だ……!?」
絶句したのはほんの瞬間的で俺はすぐに問う。いや、問うたというより反射的に状況に合った言葉を無意識に発したという方が正しいのかもしれない。
とにかく、俺はそう叫んだ。眼前にいる少女に。
突如として現れた少女は紅色のチャイナ服に身を包み、容姿は端麗で才色兼備だった。黒髪は結わずにそのまま流したままだった。
楚々や清楚と言った形容がとても的を射てるような顔立ちで、しかしそれを裏切って瞳は大きく活発な印象を与えた。
顔立ちもさることながらスタイルもいい。胸は大きいのに身体はほっそりしているというアンバランスなスタイルーーしかし病的な印象はなく健康的ーーで、顔立ちが清楚という印象もあってか、チャイナ服のスリットから覗く生足はとても艶やかだった。
「私はランプの魔人、エリーゼと申します」
目の前の少女は俺の問いに対して抑揚のあるハッキリした声で答えた。
「ま、魔人だって……?」
俺は声に出して再びそう聞き返した。
「はい、魔人です」
それに対して彼女はハッキリと答えた。
たしかに、千夜一夜物語の一編にランプの中から魔人が出てくるという話はあるのだが……。
空想の話がいざ現実で起こったとしても俺からしてみれば何かのトリックか何かと思えてしまう。
しかしトリックだったにしても彼女がここに登場する理由が分からないし、そもそも家には俺がさっき帰ってきたばかりで扉や窓は全て締め切ってある。
外からの侵入は無理だろう。だったら本当に彼女は魔人なのか?
それを信じるにしたって彼女が魔人を名乗る以上、チャイナ服は違和感ありまくりのように思える。
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