第1話

3/22

11人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
しかし、ホンの1ヵ月前に外務省から届いた小包を見てから、何と言うのか、生に対する欲求と言うのか、鬼気迫るものを感じていた。 俺は、多少照れながら、ばあちゃんに言った。   「ま、暇だし、それに・・・、俺は初めて聞いたぜ?ばあちゃん、イタリアの学校に行ってたんだって?」   ばあちゃんは、俺の言葉にゆっくりと目を閉じて言った。   「そうだよ。私はねえ、『イタリア社会主義共和国』・・・通称『サロ共和国』の女学校に通っていたのよ。 武官をしていた父が、転勤になったので卒業はしていないのだけれど・・・。」 そして、目を開けて続けて言った。 「戦争が終わって、60年以上たった今、これが送られてきたの・・・。」 ばあちゃんは、ゆっくりと立ち上がると、仏壇の下から本の様な物を取り出して俺に見せた。 それは、アルバムだった。 手製の、そまつなボール紙に色紙を張り付けた・・・、そして、表紙に書かれた手書きのアルファベット。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加