11人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
中をめくると、古ぼけた紙に、手書きの文字・・・。
そして、セピア色に変色した何枚かの写真が、掠れた色鉛筆や、かつてリボンかなんかであったろう、古ぼけた糸のようなもので飾り付けられていた。
「ばあちゃん、これって・・・?」
俺が聞くと、ばあちゃんは笑って言った。
「あたしだけの、卒業アルバム・・・。
あたしは、3年生の時に1年と少し通った『クララ・ペタッチ記念女学院』から転校しなければいけなかったの。
短い間だけれども楽しかった・・・。」
そして、俺からアルバムを受け取ると、言った。
「差出日は、1945年4月15日・・・。
よく、あたしの所まで届いたと思うの。
その時、『サロ共和国』は、敗戦直前のドイツの支援も受けられず、継戦能力も失い、崩壊へのカウント・ダウンは止められなかった・・・。」
ばあちゃんの目は、遠く、イタリアに思いを寄せているかのようだった。
最初のコメントを投稿しよう!