第1話

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「達也、ここにいくばくかのお金があります。 すぐにサロ行きの便と、当地での宿を手配なさい。 当地には、一週間程滞在する予定ですから・・・。 ああ、当地でのガイドは不要です。   今から、イタリア大使館宛にレターを書きますから、それを大使館へ届けてちょうだい。 そして、明日にでも銀座と浅草に同行なさい。 銀座では、当地で着る服を揃えます。 浅草では、お友達に持っていくお土産を求めます。宜しいですね。」   有無を言わさないばあちゃんの迫力に俺は黙って、頷いた。   「あ、あのー、ばあちゃん?」   「はしたない、おばあ様と呼びなさい。 これでも私の家系は、父方が徳川二千石の旗本。 母方は、ロンバルディアの男爵家に連なるのですよ? 貴方もその血を継いでいるのですから、貴族の末裔らしく優雅にいたしなさい。」   「はい、かしこまりました。おばあ様。」   俺の言葉に、ばあちゃんは満足して頷くと、分厚い封筒を俺に差し出して、グレタ・ガルボの様に、にっこりと笑った。
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