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「あたし達はお互いしかいないのよ」
彼女はそう言った。
未婚のまま俺を生んだ母は親戚がいないのだと、自分の両親も既にこの世にはいないのだと言っていた。
それはそれで構わなかった。
そして俺は『施設』と言うところに運ばれた。
もう、『人』ではない。
厄介者以外何ものでもなかった。
「今日からここがきみの家になるんだよ」
福祉課の職員がそう笑顔で説明した。
そこはとても綺麗とは言えない建物だったが、こんな厄介者の面倒を見るのだから文句は言えない。
いや、どうでも良かった。
そこにいる奴らも、変に親面する大人達もどうでも良かった。
ここでは自分の身の回りのことをやっていれば文句を言われることはない。
居心地がいいわけではない。
でも、ここしかいるところがないからここから学校に通った。
勉強はそこそこ出来ていたように思う。
悪いと色々面倒だからそれなりにやっていた。
ただ、生きる。
別に死にたい訳じゃない。
だから、生きる。
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