プロローグ

12/20
648人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
そんな日々に終止符を打つ。 小学3年生の時、彼女が舞い降りた。 真っ白な白いワンピース、栗色の髪は綺麗に手入れされサラサラと風にながれる。 頬はふんわり桜色、唇は小さくサンランボ色。 神に愛された子供はきっとこういう子を言うのだろう。 そう自然に思えるほど彼女は眩しかった。 園内の子供は挙(こぞ)って彼女に群がり話しかけ、彼女はその中心ですこし戸惑いながら笑っていた。 けれど俺は話しかけたりしなかった。 汚してはいけないから……。 ひとりその輪から離れ、やるべき事をやる。 今日は水やりの日。 バケツに水をくみ、それを花壇に振りまく。 「なんの花?」 聞いたことのない声に顔を上げると、窓から乗り出すさっきの彼女。 なぜか周りには誰もいなくて、彼女ひとり。 そんな状況を考えていると、彼女はもう一度「なんの花?」と聞いてきた。 「……向日葵だよ」 太陽に向いて咲く大輪の花。 それは決して俺に向くことはない。 「もう咲くの?」 まだ芽は出たばかり。 「……まだ咲かないよ」 「じゃあ、明後日には咲く?」 「もっと先」 「んと、じゃあ来週には咲く?」 「……どうかな、もっと先だと思うよ」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!