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そんな日々に終止符を打つ。
小学3年生の時、彼女が舞い降りた。
真っ白な白いワンピース、栗色の髪は綺麗に手入れされサラサラと風にながれる。
頬はふんわり桜色、唇は小さくサンランボ色。
神に愛された子供はきっとこういう子を言うのだろう。
そう自然に思えるほど彼女は眩しかった。
園内の子供は挙(こぞ)って彼女に群がり話しかけ、彼女はその中心ですこし戸惑いながら笑っていた。
けれど俺は話しかけたりしなかった。
汚してはいけないから……。
ひとりその輪から離れ、やるべき事をやる。
今日は水やりの日。
バケツに水をくみ、それを花壇に振りまく。
「なんの花?」
聞いたことのない声に顔を上げると、窓から乗り出すさっきの彼女。
なぜか周りには誰もいなくて、彼女ひとり。
そんな状況を考えていると、彼女はもう一度「なんの花?」と聞いてきた。
「……向日葵だよ」
太陽に向いて咲く大輪の花。
それは決して俺に向くことはない。
「もう咲くの?」
まだ芽は出たばかり。
「……まだ咲かないよ」
「じゃあ、明後日には咲く?」
「もっと先」
「んと、じゃあ来週には咲く?」
「……どうかな、もっと先だと思うよ」
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