38人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーどれくらい、夢中になっていたんだろう。
気がつけば、お昼をすぎていて。
でもこのあとは暇だからいいかとも思って。
……帰ろう。
そして、ピアノに浸ろう。
決して暗い過去があるわけでもないけど、友達作りが苦手な俺。
友達の数は片手で足りるほどだが、それでも心を完全に開ける友達なんていない。
社交界や何やらで、きっと大人の世界に慣れてしまったからだろうか。
ピアノの世界から一歩抜けると、全てが幼稚に見えてきてしまう。
下駄箱で靴を履き替えて、昇降口を出る。
…だから、だろうか。
今目の前で、満開の桜の木の下で血が舞うような喧嘩が行われていても、俺は何も思わなかった。
例えば、痛そうだなとか。
例えば、くだらないとか。
例えば、何で喧嘩しているのかとか。
朝、迎えられたようにもう一度桜に見送られて、校門を出ようとした時。
ーーー俺は、見たんだ。
最初のコメントを投稿しよう!