【旋 律】後編 第十三章

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. ――――…… その夜、寝室のベッドで上体だけ起こし本を読んでいる楓に、 「今夜は何を読んでいるの?」 と円香はドレッサーの前で髪を梳かしながら尋ねた。 「ん?今夜は古今和歌集」 本から目を離してそう答えた楓に、円香は「古今和歌集!」と声を上げたあと、クスクス笑った。 「亜美が聞いたらきっと目を丸くして『そんな本を趣味で読むなんて、さすが文学の世界の人』って言いそう」 そう言って手にしていたブラシを置いてベッドの中に入ると、楓は本をパタンと閉じてチェストの上にそっと置いた。 「最近、亜美が僕のことを『文学の世界の人』って言うんだよ。どうしたんだろう」 「でも、ピッタリの表現だわ。実際、楓くんって万葉集とか源氏物語とか好きよね?」 「そうだね、和歌が好きなんだ。 とても美しいなと思うし」 そう言って柔らかく微笑んだ楓の姿に『やっぱり文学の世界の人』と円香は笑みを浮かべた。
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