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すると会議に参加している若い女性編集者が熱い息をついた。
「布施先生ってイイ男ですよねぇ。
32歳独身で有名私大の心理学講師。将来は教授になることを約束された人。
私も布施先生の担当になりたいなぁ。
あのクセモノっぽい雰囲気もツボなんですよね」
『クセモノっぽい雰囲気』という言葉に裕子が小さく笑っていると、お局編集者がムキになったように身を乗り出した。
「あら、知らないの?
彼は若くて綺麗な子しか相手にしないのよ。
ここにいる私達なんて鼻にもかけてくれないわよ」
「やだ、『私達』だなんて、先輩と一緒にしないでください。私はまだ二十代なんですから」
「ほらほら、喧嘩しない」
と手をかざした編集長に、皆はドッと笑った。
その後、しばし打合せを続け、
「それじゃあ、会議はこれで終わり。休日に悪かったね。お疲れさん」
「お疲れ様でした」
裕子は皆と共に会議室を出ながら、
これからどうしようかな?
デスクで仕事をしようか、それともランチに出かけようか、
と思っていると、受付の女性社員がパタパタと駆け寄ってきた。
「佐伯さん、布施先生がお待ちですよ」
その言葉に裕子だけではなく、他の編集者達も「えっ?」と顔を上げた。
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