【旋 律】後編 第十三章

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  すると会議に参加している若い女性編集者が熱い息をついた。 「布施先生ってイイ男ですよねぇ。 32歳独身で有名私大の心理学講師。将来は教授になることを約束された人。 私も布施先生の担当になりたいなぁ。 あのクセモノっぽい雰囲気もツボなんですよね」 『クセモノっぽい雰囲気』という言葉に裕子が小さく笑っていると、お局編集者がムキになったように身を乗り出した。 「あら、知らないの? 彼は若くて綺麗な子しか相手にしないのよ。 ここにいる私達なんて鼻にもかけてくれないわよ」 「やだ、『私達』だなんて、先輩と一緒にしないでください。私はまだ二十代なんですから」 「ほらほら、喧嘩しない」 と手をかざした編集長に、皆はドッと笑った。 その後、しばし打合せを続け、 「それじゃあ、会議はこれで終わり。休日に悪かったね。お疲れさん」 「お疲れ様でした」 裕子は皆と共に会議室を出ながら、 これからどうしようかな? デスクで仕事をしようか、それともランチに出かけようか、 と思っていると、受付の女性社員がパタパタと駆け寄ってきた。 「佐伯さん、布施先生がお待ちですよ」 その言葉に裕子だけではなく、他の編集者達も「えっ?」と顔を上げた。  
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