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「嫌だ」 朝海はやはりと思い頭を抱えた 「何のために鬼が入れない海中で私は眠っていたと思うんだ」 「戦いから逃げたかったからっすよねー」 「遊莉!」 皮肉を言う遊莉を怒鳴って制する朝海は内心泣き出したい気分だった 「それに朝海、お前そんなになるまで戦って何か変わったのか?」 「なにも変わってない…だからこそ君を起こしたんだ」 「私は神様じゃないんだ…それに戦う意思なんてもう無い」 春莉は朝海にそう言いきった 「ならいいッスよー。私があなたの分まで頑張るッスから」 「なら、私はまた眠るぞ」 「はあぁぁ…もう……」 朝海は年老いて野性的になった顔を困惑の色で満たしていた そしてこの流れを丸2時間繰り返す羽目になった朝海はもう泣きたい気分だった 遊莉が春莉に圧倒的敗北を喫した為か春莉に厳しく当たるし、春莉は春莉で戦いたくないの一点張りだ 完全に硬直した 「私に用がないなら私は眠りに就くぞ」 「じゃあ、こうしませんか?」 「なんだ?」 春莉は遊莉の提案に鬱陶しそうに聞いていた 「私がアンタに勝てばこのまま私達の仲間になってもらうッス」 「お前が私にか?」 「はい」 春莉は遊莉の提案を鼻で笑った 「その代わりアンタが私に勝てば眠るなり朝海さんとジューンブライドするなり好きにしてくださいッス」 「…なんだよそれ」 朝海は飲んでいたお茶を吐き出してしまった 「わかった…一戦だけやろう」 春莉は立ち上がった 春莉の目には20年前のような殺気に満ちた鋭い眼光は無く、ただ怠惰に次の眠りを待ち望む惰性のみがあった
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