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「恭さま~」
勿論、窓はペアガラス。
それでもかすかに聞こえる黄色い声に嫌でも目は行ってしまう。
窓から見えるグラウンドで行われているのはサッカー。
3年生は受験でストレスが溜まるだろからと、体育の授業では好きな運動種目が選べるというのを恭から聞いたことを詩織は思い出した。
グラウンドを大きく跳んでいく白黒のボール。
恭にボールが渡れば湧き上がる歓声。
サラサラな髪は太陽に透けて金色にさえ見える。
もう10月。
暖かいとはいえないのに、恭の額には汗が浮かんでキラキラ光る。
同じ3年生の女子たちは自分のことなんてそっちのけで恭に釘付け。
「……いいなぁ」
同じクラスなんて我儘は言わない。
でもせめて同じ学年だったらもっと共有できるものがあるはずなのに……。
「そうか、そんなにいいならこの問題は大河内に解いてもらうかな?」
「――はい?」
いきなり振ってくる声に慌てて顔を上げれば、
「宮城、先生?」
「やっと見つめる相手を間違えてることに気がついたか」
ニヤリと笑う宮城先生。
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