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「……ちょっと、美紀ぃ?」
じろりと睨む詩織に美紀は「助かったでしょ?」なんていって、キャラキャラ笑う。
「あれでいいのよ。大河内財閥の娘ってだけで妬まれるような存在なのよ? しかも兄は『恭さま』。うまいことやりなさいって」
美紀の言ってることは正しい
だから反論も出来ず、ただ、唇を尖らせる。
ここに通う生徒たちの親は誰もが大層な肩書きを持つ。
会社の社長を初め、弁護士、医者、政治家、銀行の頭取など。
子供のときならば、普通の子供と変わらず遊ぶことが出来ても、高校生にもなれば自分の立場が理解できるようになって来る。
そんな中で妬みや謗(そし)りを受けることなんて日常茶飯事。
親が失脚すれば、友人は手のひらを返すように目の前から去っていき、本人自身もここには通えなくなる。
言ってみれば、ここは小さな「シュミレーション世界」。
ここで培った人脈が大人になった時、発揮されるのだ。
だからこそ、ここで敵を作るのはよろしくない。
上手く立ち回って、友達を作って……。
「大河内さん、少しいいかしら?」
突然、立ちはだかる壁に詩織はビクリを肩を揺らし、美紀は隣で「最悪」と小さく呟いた。
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