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立ちはだかる彼女たちにつけられた校章は青。
恭と同じ3年生。
それが、詩織を呼び止める理由なんて……。
連れて行かれたのは人気の少ない階段の踊り場。
「少し、お願い事があるの」
そう言ったのは3人の中でも一際「上品」な人だった。
「……なんですか?」
多分、全校生徒が知ってる。
彼女は前総理大臣の孫娘、荻野千鶴(オギノ チヅル)。
栗色の髪を奇麗に巻いて、メイクもばっちり。
そんな彼女がニコリと笑う。
「そんなに警戒しないで、少しお願いがあるだけだから」
物腰は柔らかい。
だけど気を許す気にはなれない。
だって、彼女の目的は――、
「今日は一人で帰るって大河内君に言ってもらえないかしら?」
恭。
やっぱり。
こんなことは初めてじゃない。
「どうして?」なんて聞く気にもなれない。
「大河内君とお話があるのだけど、いつも『妹と約束してるから』と時間をもらえないの」
だって、あげたくない。
恭との時間は誰にも邪魔されたくないのに。
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