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孤独。
仲間や身寄りがなく、ひとりぼっちであること。
思うことを語ったり、心を通い合わせた りする人が一人もなく寂しいこと。
また、そのさま。
これを常に意識するようになったのは何時からだっただろうか。
そう自身に尋ねるが、返答はない。
そして、他の誰かに尋ねようとするが、それもまた無理な話である。
というのも、孤独の意味のように僕は誰かと心を通わせることができないからだ。
いや、より正確には心を通わせることなど人を捨てた僕にとってはやろうにもやれないから、だ。
人を捨てた僕は他人とは価値観が違う。
だから、僕は上辺だけの反応をする。
僕の周りも、それで満足してくれている。
さながら熱くもなく冷たくもない、丁度良いぬくいところ。
それが僕の求める人との距離感であり、守りたくて壊したくない何よりも最優先すべき事柄だ。
だから、それを自ら進んで壊したいなんてことは思わない。
そう、思っていたのに僕は今なにをしているのだろうか。
僕がいるのは人がすっかりいなくなった放課後の私立東雲(しののめ)学園の体育館倉庫の裏。
そこにいるのは先程から話し手として活躍している僕、木戸 春斗(もくべ はると)と一人の少女だ。
くせ毛の茶色い短髪の僕とは違い、僕の目の前にいる少女は鮮やかな緑色のサラサラボブヘアー。
僕と少女の違いは他にも、まあ色々とあるが、その最たる物を提示しようと思う。
学生鞄しか持っていない僕とは違い、僕の目の前にいる少女の手には……どす黒い一本の槍が握られていたのだ。
いや、単に握られているだけであればまだ問題は無かったかもしれない。
が、しかし。
その矛先が僕に向けられているということは曲がりようもない程に、それこそ大がつく程に問題であった。
そう、僕は今見ず知らずの少女に凶器を向けられていたのである。
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