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しかし、本当にそれだけなのだろうか?
鈴山さんの癇に障ったのは、本当に僕が人間らしくしているという点だけなのだろうか?
いや、今までの筋道から考えればそれが主たるものなのだろうが、それでもやっぱり僕は他に何か彼女の気に触れたものがあるのかもと思ってしまう。
それは彼女を叩いてしまったという罪悪感から逃れたいがために出た考えかもしれないが、しかし僕はその線で予想をたててしまう。
なんとなくだが、今の自分の考えは間違ってはいないと思う。
それこそ直感的に、そう思った。
しかし、まあ目下最優先事項として君臨するのは鈴山さんに謝罪をし、そして許してもらうことである。
それもなしに次の展開に進めるわけがない。
「……まだまだ子供だな…僕は…」
静かに呟き、体の向きを変える。
視線のさきには薄暗い室内の天井しかないが、不思議と見続けて飽きることはない。
むしろ、こういう心境のなかで見てみると新鮮味さえ感じられる……気がする。
そんな曖昧な感想を心中で一人寂しく述べている時だった。
ヴーヴーヴー……という振動音と共に顔の近くに置いておいたスマホがせわしなく小さなライトを点灯させる。
ライトの色からして、これは電話だ。
こんな時間に誰だろうか?という疑問より早く、僕は片手でそれを拾い画面を開いてみる。
そこには見知った名前が記されている。
僕の良く知る人物だ。
僕は静かに名前の下にある通話ボタンを押す。
そして、その流れで通話状態になったそれを自分の耳元に軽く押し当てる。
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