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「こんな時間に何のようだ、由佳奈?」
『はい、あなたの由佳奈です。ただいま留守にしております。御用の方はピーという音の後にメッセージをお願いします』
「…いやなんで電話をかけてきたお前の方から留守番電話サービスにつながるんだよ?」
『あら?よく気づいたわね』
いや、普通すぐ気づくだろ。というツッコミの後に僕は横になるのを止め、自分の体を静かに起こす。
「それで、僕の何のようだという質問には答えてくれるのかな?」
『嫌よ。自分で予想してみなさい』
いったいどこの問題番組だよ。
そんな問題だしてみろ、すぐさま視聴者からクレームが殺到するはずだ。
「あ~……怖い夢見ちゃった~……とか?」
『ボッシュートするわよ?』
冷静かつドS感丸出しの発言に、僕は電話越しでもつい怯えてしまう。
由佳奈であれば。やりかねない。
『全くもう……私がそんな用事で電話なんてするわけないでしょ?それに私に怖いものなんて一つしかないわよ』
「いや、あるのかよ」
『あるに決まってるじゃない。まあ、それが何なのかは教えてあげないけど』
「はいはい……取り敢えず今はお前の怖いものよりも電話をしてきた要件のほうが知りたいんだけど?」
僕の発言に由佳奈は、えー…と不服そうな声を出したが、やがて短い咳払いのあとに言葉を返す。
『鈴山 山葵が病院に運ばれたわ』
一瞬。
いや、一瞬なんて言葉では物足りないくらいの間。
僕の思考に圧倒的な空白が生じた。
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