Blood2:博識ナ女

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____________ 春風香る五月の空は変に周りに気を遣っているのか相も変わらず雲一つない晴天が広がっていた。 別に春だからといって常に良い天気である必要はないと思うのだが、どうやら僕らが考えている以上に春も春で自分の季節を猛烈にアピールしているようだ。 そんなことを思いながら金曜日という平日に、僕は自分の住んでいる学生寮からやや離れたところにある大学病院へと足を運んでいた。 さて、ここで皆さんにとっては当たり前のことを言うが、金曜日ということは即ち学生にとっては言わずもがな通常どおりの登校日ということになる。 それなのにも関わらず、なぜ学生である僕が学校に行くわけでもなく、こうして朝早くに病院へと足を運んでいるのかというと、理由は昨夜の由佳奈からの電話ということにつきるだろう。 本当は電話がきたその瞬間にでも、直ぐに病院へと走っていきたかったのだが、僕はそうはしなかった。 その代わりとばかりに学校に体調不良ということで話を通し休日を手に入れた僕だが、当然何をやっても死ぬことのない不死身の体を持つ僕が病気にかかることなど先ずありえない。 ようするに皆がいうところのズル休みである。 そうまでして僕が病院に朝一番に来たのには色々と考えがあってのことである。 その考えというものの中には当然ながら現在における最優先事項として定めた昨日の謝罪というものが含まれており、そういうわけで僕はただいま絶賛土下座中なのであった。
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