32人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当に……すまなかった!」
清潔すぎるほど清潔で、そして気持ち悪い程に真っ白に彩られている病室に、僕の謝罪の声が情けなく響きわたる。
上手く言い訳することも変なご機嫌とりをすることも出来ない僕が出来る精一杯の謝罪の仕方。
どれだけ惨めったらしく見られても仕方ない。
なぜなら悪いのは全て僕なのであって、それくらいの恥など許してもらえるのであれば安いものである。
そんなことを全面的に思いながら、僕は地面にくっつけていた顔をわずかにあげて、相手の顔を見る。
その相手というのは当然ながら僕が謝罪する相手であり、一人の後輩であり、もっといえば鈴山 山葵という一人の少女だ。
僕が来たときには病室に置いてある質素なベッドに横になっていた鈴山さんだが、今は上体だけを起こしてその血のように真っ赤に光り輝く両眼で僕を視野にとらえている。
その表情からは喜怒哀楽といった明確なものは感じ取れず、せいぜい体調が芳しくなさそうとか、どこか気だるげそうとかいった曖昧な印象しか読みとれない。
「……やめてください」
鈴山さんの小さな、それでいてか細い声が聞こえた。
それが俗に言う「面を上げよ!」的な意味合いを含んだものだと理解した僕は仰せの通り、中身の詰まっていない自分の空っぽな頭を軽々とあげる。
「…えっと…許してくれるのか?」
と、しどろもどろな感じで尋ねる僕に、しかし鈴山さんは冷静な様子でコクリ……と小さく頷くだけであった。
…これは許してもらえたと判断しても良いのだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!